フェノール樹脂

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第1節 亜臨界、超臨界技術によるリサイクル

 住友ベークライト㈱の後藤ら1) 2) 3) 4) は、熱硬化性樹脂の硬化物のリサイクルを目的として、超臨界水を反応溶媒として分解を検討した結果を報告している。 フェノール樹脂とエポキシ樹脂の検討結果が報告されているが、そのうちフェノール樹脂の検討結果は以下のとおりである。 反応温度は400~500℃、反応時間10~120分、アルカリ触媒の効果について検討した結果、470℃において分解率71%、フェノール、クレゾール、キシレノールなどのモノマー回収率は最大で42%であった。 また、分解反応とともに再結合反応を併発していることが確認された。

 住友ベークライト㈱の後藤ら5) は超臨界水中でのフェノール樹脂硬化物の分解機構について、窓付き高温高圧容器を用いて反応場の直接観察を行い結果を報告している。 分解性の異なる2種類のサンプルを400℃において30~90分反応させ、分解性の低いサンプルは3相を形成したが分解性の高いサンプルは均一相を形成し、相状態が分解反応性に影響を与える可能性があることを示した。

 住友ベークライト㈱の後藤ら6) は、フェノール樹脂硬化物の超臨界水による分解性を改善することを目的に、亜臨界フェノール、超臨界水/フェノール2成分系溶媒を用いて検討した結果を報告している。 亜臨界フェノール溶媒では、340~380℃で反応させた結果、最短で10分で分解反応を完了したことを確認した。生成物はオリゴマーでフェノールノボラックの代替原料として利用が可能である。 超臨界水/フェノール溶媒では、400℃で反応させた結果、同様にフェノール樹脂硬化物の分解が可能であった。

 住友ベークライト㈱の後藤ら7) は、フェノール樹脂硬化物の特性と分解反応の関係を明らかにすることを目的に、亜臨界フェノールを反応溶媒としてガラス転移温度の異なるフェノール樹脂硬化物の分解実験を行い、その結果を報告している。 反応温度は350℃とし、いずれも30分以内で完全に分解していることを示しておりガラス転移点の低い硬化物ほど反応速度が高いことを確認した。分解生成物は重量平均分子量1000~8500のオリゴマーであり、フェノールノボラック代替の化学原料として再利用が可能としている。

 住友ベークライト㈱の石川8) は、フェノール樹脂のリサイクル技術の実用化を目的として、フェノール樹脂複合材料の硬化物の分解を検討した結果を報告している。 有機成分86%、無機成分14%のフェノール樹脂複合材料硬化物を、水/フェノール2成分系溶媒を用いて反応温度300~360℃、反応時間5~50分で反応させた結果、フェノールオリゴマーを得た。 どの反応条件でもオリゴマーの分子量に大きな違いがなかったことから、いずれの条件で生成したオリゴマーでも再生樹脂として再利用することが可能としている。 また、反応速度論的考察から、フェノール樹脂モデル硬化物とフェノール樹脂複合材料硬化物の分解挙動には差がないことを確認している。

各反応温度におけるフェノール樹脂複合材料の分解率と反応時間の関係
各反応温度におけるフェノール樹脂複合材料の分解率と反応時間の関係 8)

 住友ベークライト㈱の下谷地ら9) は、再生レジンを用いたフェノール樹脂複合材料の特性評価を行い、その結果を報告している。 有機成分86%、無機成分14%のフェノール樹脂複合材料硬化物を、水/フェノール2成分系溶媒を用いて反応温度356℃、反応時間5~20分で反応させた結果、フェノールオリゴマー(再生レジン)を得た。 反応時間15分で得た分解生成物から再生レジンを調整し、再生レジンを用いたフェノール樹脂複合材料の特性評価を行った結果、おおむね実用に耐える特性を有していることを確認している。

フェノール樹脂複合材料特性
フェノール樹脂複合材料特性 9)

 住友ベークライト㈱の後藤10) は、フェノール樹脂のリサイクルを目的として、超臨界(亜臨界)流体技術を応用したケミカルリサイクル技術を検討した結果を報告している。 反応溶媒として超臨界水を用いた分解検討では、480℃において分解率71%、モノマー回収率42%の結果を得たが、分解だけではなく再結合も併発するため完全に近い分解や高い収率でのモノマー回収が困難であった。 亜臨界フェノール溶媒での分解検討の結果、反応温度350℃、反応時間30~50分で完全に分開し、主成分として再生レジンを得ることができた。亜臨界水/フェノール2成分系溶媒でも同様にフェノール樹脂硬化物が完全に分解することを確認している。 再生レジンから得た成形材料は機械的特性、電気的特性ともにバージン材料と比較して90%以上の良好な値を示すことを確認した。 量産プロセスの開発を進めており、新エネルギー・産業技術総合開発機構からの助成金を得て同社静岡工場に年間数百トン規模の実証プラントを建設し、量産技術の開発を進めている。

実証プラントの外観
実証プラントの外観 10)

 住友ベークライト㈱の後藤11) は、フェノール樹脂のリサイクルを目的として、超臨界(亜臨界)流体技術を応用したケミカルリサイクル技術を検討した結果を報告している。 硬化した樹脂を短時間で分解し再生材料を高収率で回収するために、温度、圧力、溶媒の種類を検討した。

 反応溶媒として超臨界水を用いた分解検討では、480℃において分解率71%、モノマー回収率42%の結果を得たが、分解だけではなく再結合が起こることが示唆された。 水/フェノール2成分系溶媒中での分解検討の結果、340~380℃で完全に分解し主成分として再生レジンを得ることができた。反応時間は380℃で10分であった。 再生レジンから得た成形材料は機械的特性、電気的特性ともにバージン材料と比較してそん色のないことを確認した。 量産プロセスの開発を進めており、新エネルギー・産業技術総合開発機構からの助成金を得て同社静岡工場に年間数百トン規模の実証プラントを建設し、量産技術の開発を進めている。

参考文献